[067] Deskstar 60GXPシリーズ(IBM)のファームウェアアップデート方法
Deskstar 60GXPシリーズ(IC35LXXXAVER07,IBM)には、ファームウェアに不具合があります。そのファームウェアをアップデート(更新)し、問題を改善します。ツールは英語ですが、その使い方を日本語と写真で解説します。
大人気を誇ったIBM Deskstar 60GXPシリーズ
IBMのハードディスクであるDeskstar 60GXPシリーズ(IC35LXXXAVER07)は、
前モデルであるDeskstar 75GXPシリーズ(DTLA-XXXXXX)の後継として登場した。
IC35L040AVER07-0(40GB)
Deskstar 75GXPシリーズは、その性能の高さから人気があったが、
Deskstar 60GXPシリーズはさらに高い性能を持っていた。
回転数(7,200rpm)、平均シークタイム(8.5ms)、キャッシュ(2MB)は同じだが、
プラッタ1枚あたりの容量は、15GBから20GBへと高密度化している。
このことから、Deskstar 75GXPシリーズ以上の速度が出るとして、
Deskstar 60GXPシリーズは相当な数が売れた。
参考:20GBプラッタ採用のIBM製7200rpm HDDが登場(ascii24.com)
Deskstar 75GXPシリーズの高性能を引継いだ、Deskstar 60GXPシリーズ。
だが引き継いだのは、それだけではなかった…
先代、DTLAシリーズの突然死
Deskstar 75GXPシリーズの突然死。
これは、それが持つファームウェアが原因であった。
そして、後継のDeskstar 60GXPシリーズも、この突然死を引き継いでいたのである。
Deskstar 60GXPの登場は、Deskstar 75GXPの突然死が表面化する前であったため、
Deskstar 60GXPの性能の高さのみが注目され、Deskstar 60GXPは何の疑問もなく、広まっていった。
そして数ヶ月…
Deskstar 75GXPの突然死が多発。
有効な対応策なく、次々と死んでいく中、
後を追うように、Deskstar 60GXPの突然死が始まったのである…
地に堕ちた"王者"IBM
実は、対応策はあった。
Deskstar 75GXPシリーズの突然死は、ファームウェアのアップデートで回避できたのだ。
だが、それが公開されたのが遅く、またその公表方法に問題があり、
知る人はごく一部に限られてしまった。
知る由もない大半のユーザーが突然死に遭遇し、
貴重なデータを失っていった…
皮肉にも、その性能が高く広まった数が多いため、
被害も、相当な広範囲に及ぶこととなった。
こうして、DPTA、DJNA、DTLAと、
他社を圧倒する人気を誇っていたIBMの評判は、地に堕ちたのである。
消えたIBM
その後、IBMのハードディスク部門は日立に買収され、HGSTとなったが、
Deskstar 75GXP、Deskstar 60GXPに於いて苦しみを味わった人間の中には、
HGSTとなった今でも、IBMの影が見える同社製ハードディスクに対して嫌悪感を抱いている者も多いという…
ファームウェアアップデートツール入手
IBM IntelliStation M Pro (Type 6868,6889)
IntelliStation Z Pro (Type 6865,6866) / NetVista – PZ2Z24US
IBM DeskStar hard disk drive firmware update
pz2z24us.exe/2.31/2002-08-12
ツールのインストール
フロッピーディスクに対してインストールし、フロッピーディスクから起動して実行する。
フロッピーディスクの作成方法に関しては、
Deskstar 75GXPシリーズの突然死を参考のこと。
ツールの実行
実行する前に、データのバックアップを取ること。
これは不具合の修正なので、速度向上や静音化はない。
作成したフロッピーから起動する。
起動ディスクとなっているので、ツールが起動する。
グラフィカルな画面となり、ドライブがスキャンされる。
スキャンの結果、アップデートが必要な対象ハードディスクが発見されると、
下の画面が表示される。
だが、アップデート対象のハードディスクがない場合(既にアップデート済みの場合も含む)は、以下の画面となる。
この場合はハードディスクの接続を確認するか、お使いのツールが間違っていないか確認すること。
はじめに、「Utilities」→「Drive Info」から、ハードディスクの「Firmware level」を確認しておく。
確認したら「OK」を選択し、元の画面に戻る。
そして「Update Firmware」を選択する。
表示される「Confirmation(確認事項)」を読む。
<注意>
実行前にデータのバックアップを取ること。
<警告>
アップデート中は決して電源を落さないこと。
万一電源が落ちると、ハードディスクが
認識されない等の深刻な問題が発生する可能性がある。
ハードディスクの設定は、実行後に全てデフォルト(工場出荷状態)に戻されるので、
必要であれば設定を記録しておくこと。
その上で実行するなら「Contimue」を選択する。
アップデートが進む。
実行後、下の緑画面が出れば、アップデートは完了となる。
その後、再度ハードディスクがスキャンされるが、アップデート対象のハードディスクが1つだけの場合、
アップデートする対象がなくなるため、以下の画面となる。
アップデート対象のハードディスクを複数繋いでいる場合は、
対象を選択し、上記と同様の手順でアップデートを行う。
アップデート後に、Drive Fitness Testを実行し、
「Utilities」→「Drive Info」から「Microcode level」を確認する。
(「Microcode level」は、上記の「Firmware level」と同意)
アップデート前後で異なっている(=更新)ことを確認する。
アップデート後
アップデートしたからといって、安心はできない。
アップデートを施す前に使い込んだもの、また不具合が出てしまった後の場合、
アップデート後に安全に使えるという保証はない。
そんなハードディスクは、使用を控えるか、一時領域等の故障してもいいような用途に留めるべきだろう。
だが、どうしても使い続けないとならない場合は、
Drive Fitness Testで物理フォーマットや完全チェックを行い、
さらに数日間の試験運用で入念に安全を確認すべきだろう。
また、Deskstar 60GXPシリーズ登場から4年以上が経過している。
ファームの不具合とは関係なく、ハードディスクが寿命を迎える時期である。
Deskstar 60GXPシリーズは流体軸受けではなくボールベアリングであるため、
キーンという回転音が、相当大きくなっているだろう。
流体軸受けの新型ハードディスクを入手し、退役させるのもよいだろう。
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更新履歴
- 2005/12 作成