[004] DTLAシリーズ(IBM)のファームウェアアップデート方法

2015年5月21日

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DTLAシリーズ(Deskstar75GXP,IBM)には、ファームウェアに不具合があります。そのファームウェアをアップデート(更新)し、問題を改善します。ツールは英語ですが、その使い方を日本語と写真で解説します。

大人気を誇ったIBM DTLAシリーズ

HDDの有名メーカーであるIBM(現在はHGST)。
そのIBMから発売されたのが、DTLAシリーズ(Deskstar75GXP)です。

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DTLA-307015(15GB)
DTLA-307020(20GB)
DTLA-307030(30GB)
DTLA-307045(45GB)
DTLA-307060(60GB)
DTLA-307075(75GB)

UltraATA/100
平均シークタイム:8.5ms
キャッシュ容量:2048KB
回転速度:7200rpm

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DTLA-305020(20GB)
DTLA-305030(30GB)
DTLA-305040(40GB)

UltraATA/100
平均シークタイム:9.5ms
キャッシュ容量:512KB
回転速度:5400rpm

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このシリーズの7200rpmモデルは登場当初、性能面で各社を圧倒、
その性能の高さから多くの雑誌に取り上げられ、非常に大きな人気を呼びました。

私はDTLA-307030(30GB)を所有しています。


1プラッタ15GBで、確かに速度は速かった

DTLAシリーズの突然死

しかし、このシリーズの7200rpmモデルが突然死するという報告が多々あります。
短いもので半年以内に突然死するこの現象は、
どうやら初期モデルのFirmware不具合が原因のようで、
米国では集団訴訟にもなりました。

IBMに集団訴訟(ZDNet)(リンク切れ)|75GXP class-action suit filed(TechReport)
(下記に関連リンクが多数あります)

Firmwareは普通、書き換えができるようになっていますので、
書き換えツールがあればこの不具合を修復できるということになります。
IBMは各種HDDツールを出しているのは有名ですが、
FirmwareUpdateツールはそこには見当たりませんでした。

しかし、予想外のところからそのツールを見つけることができました。

私はこのDTLA不具合の件を知り、特に不具合はなかったものの、
それまでメインとして使っていたDTLA-307030を退避、メインをMaxtorに移行させていましたが、
今回このツールを見つけるに到り、Updateしてみることとしました。

Updateツール入手

先に「予想外のところ」と記しましたが、それはHDDのサイトではなく、
DTLAシリーズを搭載しているIBMやHP製、DELL製のPCのサポートサイトのことです。

これは盲点と言えるでしょうが、HDDのサイトにないのは何か訳があるのでしょう。

ツールは2種類有りますので、お使いのDTLAのMicrocodeLevel(=FirmwareVersion)を

Drive Fitness Test
or
Identification Utility for IBM Deskstar hard disk drives

で調べた上で、その種類に合ったものを入手してください。

■お持ちのDTLAのMicrocodeLevelが「xxxIxxxx(4文字目は英大文字のI:アイ)(例:TX4IA50C)」の場合

IBM IntelliStation / NetVista / PC300 / PC300GL / PC300PL – PZ2Z16US
IBM DeskStar hard disk drive firmware update
pz2z16us.exe/2.31/2002-01-18

pz2z16us.exe (リリース日 2002.01.18) (日本語のページはあるがファイルがリンク切れ)

pz2z16us.exe (リリース日 2002.01.18) (英語のページだがファイルあり)

pz2z16us.exe (リリース日 2002.01.18) (日本語のページでファイルあり)

ここでは便宜上"Update16″と呼びます。

(2012.05.16 リンク切れを修正しました)

■お持ちのDTLAのMicrocodeLevelが「xxxOxxxx(4文字目は英大文字のO:オー)(例:TX4OA50C)」の場合

NetVista 2179, 2284, 6643, 6832, 6833 – PZ2Z18US
IBM DeskStar hard disk drive firmware update
pz2z18us.exe/2.31/2002-04-04

pz2z18us.exe (リリース日 2002.04.04) (英語のページだがファイルあり)

pz2z18us.exe (リリース日 2002.04.04) (日本語のページでファイルあり)

ここでは便宜上"Update18″と呼びます。

(2012.05.16 リンク切れを修正しました)

ツールのインストール

ツールはFDに導入してそこから起動するのですが、一旦HDDにインストールする必要があります。
予めUpdate16では2枚、Update18では1枚のFDを準備してください。

DLしたファイルを実行すると、インストールが始まります。
この時のターゲットフォルダはHDDであればどこでも構いません。

HDDへのインストールが終わると、
FDを求める指示が出ますので、FDを入れて進んでください。

国を選択します。

次にキーボードを選択します。

FDが作成できたら作業は完了です。

FDから実行

Updateの前に、データのバックアップを取ることをお勧めします。

これは不具合の修正ですので、速度向上/静音化はありませんが、
当サイトの掲示板によりますと、場合によっては静音化があるようです。

作成したFDから起動します。
起動ディスクとなっているので、ツールが起動します。
この時、HDDを検索してUpdate対象のHDDがない場合
(既にUpdate済みも含む)は以下の画面が出ます。

この場合はHDDの接続を確認するか、お使いのツールが間違っていないか確認してください。

私の所有しているDTLA-307030のMicrocodeLevelは「TX4OA50C」ですのでUpdate18を使いました。
対象HDDが認識されると、以下の画面が出ます。

画面右下のファームウェアをメモしておくと良いでしょう。
私の場合は「TX4OA50C」でした。

Updateするには「UpdateFirmware」を選択します。
注意書きが出ますので、良ければ「Continue」を選択します。

するとUpdateが実行されます。
この時は絶対に電源を切らないで下さい。

途中で電源断となった場合、HDDが認識されなくなる等の
致命的なダメージを与える可能性があります。

成功すると、以下の画面が出ます。
「OK」を選択してください。

再起動の指示が出ますので、再起動してください。

これでUpdateは終了です。

結果

正常にUpdateされたかを確かめてみましょう。

HDDの詳細情報は、IBMが出しているDrive Fitness Testを使うと見ることができ、
そのデータはFDDに保存することができます。

それによると…

項目:Update前→Update後

Model:DTLA-307030→DTLA-307030

Capacity:30.74GB→30.74GB

Cache size:1916KB→1916KB

Microcode level:TX4OA50C→TX4OA55A

ATA Compliance:ATA-5→ATA-5

即ち、ツールにより TX4OA50C → TX4OA5AA にUpdateされたということです。

私の場合、Update後の動作(動作音/速度等)に関して、特に変化はありませんでした。

では、このUpdateによる改良点は何なのでしょうか?
ドキュメントによると…

This firmware update has been developed to improve hard drive
stability and the SMART offline data collection process.
It is part of our ongoing commitment to improve hard drive quality.

つまり「安定性の向上とS.M.A.R.T.の改良」の2点とのことですが、
これでは詳細は分かりません。
(不具合を認めることになるので、意図的に詳しく書かないのかも…)

DTLAはSMARTで監視しているにもかかわらず、
何の予兆もなく死んでいくということが多々あったようですが、
この「S.M.A.R.T.の改良」でそれが改良されているのでしょうか?
そうだとすれば、Norton等で監視している限りは、幾分安心して使えることとなります。

いずれにしろ、Firmwareが用意されているということは、
Updateする前のDTLAは不具合を含んでいることを意味しており、
Update価値は大いにあると思います。

なお今回、私はバックアップを取らないまま実行しましたが、
問題なくデータは保持されました。
しかし、実行時は念のためにデータのバックアップをお勧めします。

これで安心?

ファームを上げたからといって安心はできません。
この処置(FirmwareUpdate)を施す前に随分使い込んだDTLA、
また不具合が出てしまった後のDTLAの場合、処置後に安全に使えるという保証はありません。
それらのHDDは使用を控えるか、死んでもいいような用途
(一時領域等)にする方がいいでしょう。

しかし、どうしても使い続けねばならない場合は、
Drive Fitness Test等で物理フォーマットや完全チェックを行い、
さらに数日間の試験運用で入念に安全を確認してください。

また、DTLAの登場から5年以上が経過しています。
ファームの不具合とは関係なく、ハードディスクが寿命を迎える時期でもあります。

ファーム修復後正常動作していたが、その後寿命を迎えられた方(リンク切れ)

可能であれば、他のハードディスクを用意し、移行されることをお勧めします。

その後

2003年1月現在、上記の処置を施したDTLA-307030は問題なく使用できています。
2006年8月現在、上記の処置を施したDTLA-307030は問題なく使用できています。

熱対策として5インチベイに取り付けています。

しかし長い間使っているためか「キーン」という回転音が耳に付くようになりました。
ゴリゴリというシーク音の方はHitachi Feature Toolでかなり減らせるのですが、
回転音はツールでは対処できません。

静音化ケースに入れるという方法がありますが、今のところそのままにしています。

メモ

HP製PCに搭載されているDTLA用のファームウェア
http://www.support.kayak.hp.com/kayaksupport/level4/281kdf892en.exe.html
http://www.support.vectra.hp.com/vectrasupport/level4/33vdg324en.exe.html
http://www.support.brio.hp.com/briosupport/level4/141bdf772en.exe.html
(上記は全部同じもののようである)

この他にもDELL製PC搭載分等、検索で見つけることができるでしょう。

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スペックシート上ではCacheSizeは2MBとなっていますが、
そのうち最大132KBをFirmwareが占めるので、
CacheSizeが2MBと表示されないのは正常ということです。

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上記はDTLAについての解説ですが、
ハードディスクが「60GXPシリーズ:IC35L0xxAVER07(x:任意)」の場合は
IBM Deskstar 60GXPシリーズの突然死で解説してあります。

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ファームウェアのバージョンを知るためだけに
PCを起動ディスクから立ち上げるのは面倒だ、という場合
DTLAシリーズと60GXPシリーズ(IC35L0xxAVER07)専用ですが、
重宝するツールがあります。

Identification Utility for IBM Deskstar hard disk drives

というツールで、これは対象HDDの
容量/シリアルナンバー/ファームウェアのバージョン(=MicrocodeLevel)
をWindows上(Win95,98,Me,NT,2000)から確認するものです。

関連

海外ではもっと大変なことになっているようです。
不具合があったのは事実ですが、訴訟記事が多いのは国柄でしょう。

The Tech Report: 75GXP class-action suit filed
The Inquirer: IBM hit with hard drive class action
The Register: IBM hit with hard drive class action suit
PCWorld: IBM Sued Over Hard Drive Quality
IBMにハードディスク集団訴訟

IBM 75GXP class action home page(リンク切れ)
IBM 75GXP集団訴訟ホームページ

The Register: How to sue IBM in three easy steps
IBMを訴える簡単3ステップ

AnandTech: DTLA FAQ(リンク切れ)
The Tech Report: Dr. Evil asks: GXP problems?
IBM 75GXPの問題

Hexus Net: IBM failures
被害者の叫び

IBM sucks – Dead or Dying IBM 75GXP Drives
死亡必至 IBM 75GXP

Pair Networks: Drive Swaps(リンク切れ)
IBM 75GXPの障害報告

The Inquirer: Fury breaks out over IBM hard drives
IBM製ハードディスクに激怒

The Register: Deskstar 75GXP: the pain continues
IBM 75GXPの痛みは続く

Tweaktown: IBM GXP Problems – The Truth Exposed And Possible Fixes(リンク切れ)

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