[002] HDDに関する知識(エラー/故障/障害例など)

2015年5月21日

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PCパーツの中で、HDDは消耗品です。HDDの管理に精通するためには、障害の種類や内部構造を知ることが不可欠です。ハードに詳しくない方でも、一読されると良いでしょう。

HDDは消耗品?

PCにはなくてはならないのハードディスクドライブ(HDD)。

PCの買い替えやHDD増設で、複数のHDDを手にすることも多いでしょう。
最近では160GBのHDDが1万円前後で入手できるようになっており、
HDDが非常に高価であった昔では、考えられないことです。

私が所持しているHDDの一部(左が古いもの、右が新しいもの) 私が所持しているHDDの一部(左が古いもの、右が新しいもの)
私が所持しているHDDの一部(左が古いもの、右が新しいもの)

しかし、HDDは他のデバイスに比べて壊れやすいといいます。
実際、私もHDDの故障を多々見てきました。

私が所持している「故障」HDDの一部 私が所持している「故障」HDDの一部
私が所持している「故障」HDDの一部
(廃棄したものもあり、これ以上の故障を経験している)

HDDは他のデバイスに比べ非常に故障しやすいのです。
モーター等の稼動部分があることが、その大きな原因です。

・回転機構がある・・・モーター/ベアリングが徐々に劣化してくる

・精密機器である・・・振動に弱く、取り扱い扱いは慎重に

・熱に弱い・・・夏場は手で持てないほど高温になることがある

空きベイが少ない筐体にHDDを複数取り付ける必要があり、
3つのHDDを隣接して取り付けたことがあるのですが、
両端に挟まれたHDDに異音が発生し、止まってしまうことがありました。

その時は、発熱が大きいことで有名なSeagate製HDD(初代とII)に
挟まれていましたから、その熱はすさまじいものです。
熱でおかしくなったのは理解できることです。

取り外して間隔を空けてみたところ、問題なく使えるようになりました。
そのまま放置していれば、熱で修復不能になっていたでしょう。
このように、HDDの管理に於いて、放熱処理は大変重要です。

HDDは壊れやすく、間違いなく「消耗品」です。
CPUやメモリー、マザーボードが壊れても、交換すれば済みますが、
HDDはその故障の程度により、中のデータは元に戻りません。

PC管理を念入りにする人の中には、故障しなとも1年で取り替えるという人がいます。
それはやりすぎじゃないかと思われるかも知れませんが、これは納得できることです。

故障したHDDからデータを修復するサービスがあります。
修復費用が高額ですので、個人ではまず断念せざるを得ないでしょうが、
中のデータにそれ以上の価値がある場合、依頼するのも手です。

パソコンは生活になくてはならないものとなりました。
しかし、同時にHDDの故障でデータを失う人も増加しています。
よって、現在パソコンに詳しくないという人も、HDDの知識を付けておくことは大変重要です。

では、HDDの故障の種類について見ていくことにしましょう。

内蔵ディスクの物理的な障害

HDDの中には、ディスク(円盤)が入っていますが、
この表面に損傷を受けるなどして、物理的に壊れることです。

HDDの円盤(故障HDDのもの)。鏡のように綺麗である。 HDDの円盤(故障HDDのもの)。鏡のように綺麗である。
HDDの円盤(故障HDDのもの)。鏡のように綺麗である。

ファイルの読み込みに非常に時間が掛かり、カコンカコンというような音を
何度も繰り返している場合は、このディスク障害の疑いが濃厚です。
ディスクからの読取りに失敗したヘッドが、読み取りを繰り返している音のようです。

内蔵ディスクの物理的な障害の発生要因としては、
振動を与える(落とした、ぶつけた等)ことです。

ディスクとヘッドはわずかな隙間しかなく、
振動によりディスクとヘッドが接触し、ディスクを損傷させてしまいます。

ヘッドとメディアとの空間には、煙も入れないほど狭い。 ヘッドとメディアとの空間には、煙も入れないほど狭い。
ヘッドとメディアとの空間には、煙も入れないほど狭い。
回転中はその風圧で浮いている。

このような現象が生じたら早急にHDDを交換し、
データが読み出せる内に、データを退避させましょう。

おかしいのは時々だとか、しばらく放置すると使えるとかで、
そのまま使用していると、エラーが広がり、最終的に使用不能になることがあります。
衝撃等でHDD内部に微細なゴミ(ディスク表面をヘッドが叩くなどして発生)が生じ、
それがヘッドにぶつかってまたゴミを生じる…という現象が起こります。
そうして、はじめは少なかったエラー箇所が徐々に増え、広がっていくのです。

仮に衝撃に強いと言われるHDDでも、HDDを立てた状態でパタンと倒すと
それだけで対衝撃値を超えてしまいますから、安心はできません。

—–参考:2002.09.29 追記—–
TDK HDDの耐衝撃性を1000Gに強化
TDKは9月27日、HDDの動作時耐衝撃性を従来の約5倍となる
1000Gに強化するヘッド技術を開発、2003年後半から量産出荷を始めると発表した。
1.5メートルの高さからコンクリート床に落としても正常動作するHDDが実現できるという。
———-

また、2.5inchのHDDはその性質(ノートPCでの使用)上、
3.5inchのそれよりも衝撃に強いといいますが、それもあまりあてになるものではありません。

特に、組み立て時にぶつけることが良くありますので注意しましょう。

取り付け後、HDDはしっかりと固定することです。
ねじをしっかりと締めるのは当然ですが、
ベイがないからといって固定しない(または宙に浮かしている)のは論外です。
HDD自体の振動の影響でヘッドの動きに無駄が生じ、
パフォーマンスが落ちるだけでなく、クラッシュの原因にもなります。

しかし、購入後気を付けているからといって安心できないのが厄介なところです。
というのも、売られているHDDに衝撃が加わっていないという保証はないからです。

HDDベンダは、HDDを透明のプラスチックケースに入れた後、
専用のパレット(スポンジで区切られた緩衝用ケース)に入れて出荷します。

こうすることによって衝撃から保護するわけですが、
流通経路によっては途中で詰め替えられる可能性があり、その時に衝撃が加わることもあります。

さらに、店頭陳列(ここでは客が手に取れる状態という意)時には
店員や客によって衝撃が加わります。
Seagateの場合は下写真のようなプラスチックケースに入れられていることがほとんどです。

これはSeagateが使うプラスチックケース
これはSeagateが使うプラスチックケース

他ベンダでは導電性バッグ(銀色の袋)の外を緩衝材で包むことがほとんどですが、
まれに包むのに手間が掛かるのか、導電性バッグだけの状態で陳列されていることもあります。

この状態で客が手に取れることもある
この状態で客が手に取れることもある

当然、導電性バッグは静電気を防ぐためであり、衝撃を防ぐ働きはありません。

衝撃が加わったかどうかなど、見た目では分かりません。
こうして「初期不良品」といわれるHDDが生み出されるのです。

できるだけ衝撃の加わっていないHDDを望むのであれば、
客が直に手に取れるものは避た方が良いでしょう。

駆動部の損傷

ディスク(円盤)には問題ないが、駆動部が故障したために
回転やヘッドの動きに不具合が起きることがあります。

円盤とヘッドの駆動部。最近は流体軸受のものが人気。 円盤とヘッドの駆動部。最近は流体軸受のものが人気。
円盤とヘッドの駆動部。最近は流体軸受のものが人気。

ディスクは無事なので、取り出して回転部分を交換して…と修理できればいいのですが、
開けた時点で空気中のホコリが入り、使えなくなりますので開けてはいけません。
このサイトのHDD内部の写真は、すべて壊れたHDDのものです。

開けるとホコリが入ってしまう
開けるとホコリが入ってしまう

充分な熱対策をしないで長時間の稼動、または衝撃に起因します。
熱でグリスが劣化してボールベアリング(BB)が傷付いて回転がぶれてしまいます。

最近の流体軸受(FDB)を使ったHDDはこの損傷が起きにくいといいますが、
熱や長時間の使用で劣化するのには変わりはありません。

コントロール回路(基板)の障害

HDDには基板がありますが、これが壊れることです。
BIOSで認識されなくなったり、ドライブが回転しなくなります。

HDDの基板
HDDの基板

熱対策がおろそかになると、その影響で基板(チップ)が壊れることがあります。
冬場は静電気にも注意が必要です。

しかし、熱対策に気を使っていても、チップに不良があり壊れることもあります。
富士通HDD(MPG-)の集団死は有名ですが、ひどい場合は、チップが焼けることもあります。

焦げたチップ
焦げたチップ

以前、Western Digital製HDDの基板が焦げたことがあります。
不快な匂いが部屋に立ち込めました。

また、フラットケーブルに取り付け時の不注意で、
接続コネクタのピンを曲げてしまうこともあります。

軽く曲がった程度であればピンセットで直せますが、
直せない程度まで大きく曲がってしまうことや、ピンが折れてしまうこともあります。

曲がったピン
曲がったピン

基板だけが壊れた場合は、基板を取り替えれば復旧できる可能性があります。

基板を交換する(ニコイチ修理)
基板を交換する(ニコイチ修理)

しかしこれを行うためには、同型式のHDDを入手する必要があります。
市場にないHDDの場合は、中古で探さねばなりませんので苦労します。

また、型式が同じだからといってこの修理法ができるとは限りません。
型式が同じでも、製造時期等が異なることがあり、
その場合はチップをはじめとする部品が同一でないこともあります。
この場合、取り替えることができたとしてもBIOSで認識されないなど問題が起こります。
探す際は、製造時期や製造工場まで一致させるようにしましょう。

分解する際は、基板のネジが特殊ですので(下写真)、特殊なドライバ(トルクス)が必要です。

特殊な形状で、普通の +- ドライバでは開けられない
特殊な形状で、普通の +- ドライバでは開けられない

このような個人レベルでの修理を試みる場合は、
中のデータがあまり重要でない場合のみに限定しましょう。

非常に重要なデータであり、どうしても復旧させねばならない場合は、
専門の業者に依頼すべきです。

故障(クラッシュ)したハードディスク(HDD、HD)を預かり、
データ修復(復旧)を行う業者で、データリカバリー業者ともいわれます。

進んだ技術や大きな施設が必要になるため、料金は高額になりますが、
中のデータにそれ以上の価値がある場合は、依頼するのが賢明でしょう。

HDDは非常に精密な機器です。
個人で修復しようとすると、かえって事態を悪くしかねません。

HDDのデータ復旧(修復/復活/回復/データリカバリー)

ファイルシステムの障害

比較的経験することが多い障害で、ファイルが読めなかったり消せなくなります。
この場合は、SCANDISKを実行することで、修復することができます。

エラーはSCANDISKで発見、修復可能
エラーはSCANDISKで発見、修復可能

破損が検出されたファイルは別名で保存されるか、または切り捨てられます。
それにより、データが失われる可能性があります。

破損ファイルは、障害が発生したドライブのルートに
破損クラスタファイル(*.chk)として保存されることがありますが、
中身をメモ帳等で見て利用できないと判断すれば、消してしまっても構いません。

これらから元ファイルが修復できる可能性は少ないですから、
残していても容量の無駄になるだけです。

物理フォーマットの障害

ドライブのセクタ配置が破損している可能性があります。
この障害があると、FDISK実行時にフリーズすることがあります。

物理フォーマット(Low Level Format)することで解消できますが、
その後は論理フォーマットの後、SCANDISK等で入念にチェックしておきましょう。

エラーが出たら

一度でもエラーの出たHDDを使い続けるのは危険です。
先述のように、最初はエラーが少しでも、徐々に増えてくる可能性があるからです。
また、いつ壊れるか分からない状態というのは、精神的にもよくありません。

新しいHDDを購入し、交換しましょう。
繰り返しますが、HDDは「消耗品」です。
中古品はどんな扱いをされてきたか分かりませんから、避けるべきでしょう。

ファイルが読める場合は、データが読める内に新規HDDにデータを退避させます。

新品のHDDであっても、予めツールでチェックしておくことべきでしょう。
新品が初期不良品でないという保証は、どこにもありません。

データを移し終って喜んでいたら、移した先が故障し、
データを失ったとなれば、泣くに泣けません。

また、故障後、すぐにHDDが入手できないこともありますので、
手元には予備のHDDを置いておくとでしょう。

エラーが出たHDDを使いつづけることは避けるべきですが、
どうしても使う場合は、物理フォーマットを掛けた上で
十分な診断を行い、安全を確認すべきでしょう。

これで復活できることがありますが、
一時領域などの、あまり重要でない利用にとどめるのが賢明です。

HDDを長持ちさせるために

一般に、HDDの寿命は約5年といわれます。
しかし、最近のHDDは1年未満で壊れることも多々あるようです。

いくらHDDが安くなったといっても、数ヶ月で取り替えるのは手間が掛かります。
よって、少しでも長く、安全に使うためには、以下の対策が必要です。

放熱対策をする
空気の流れの良いところに取り付ける
CD-ROMドライブ/HDD等に隣接させない
HDD用クーラーを付ける

振動対策
緩衝材で包まれていないHDDは買わない
振動を与えないように取り扱う
CD-ROMドライブ/HDD等、振動源に隣接させない
しっかりと固定する
PC本体を動かす場合はHDDが回転していない時に行う

静電気待策
HDDに触れる前に静電気を逃がしておく
保管の際は導電性バッグ(購入時に入っていた銀色の袋)に入れておく

上記の対策をしたからといって、故障しないとは限らないので、
やはりこまめなバックアップが大切です。

ミラーリング(RAID1)ができるのであれば行い、
さらに定期的にDVD-R等の外部メディアにバックアップしましょう。

そして、故障の予兆を掴むためにもS.M.A.R.T.での常時監視を。

HDD関連ツール

HDDベンダ各社は、HDDのメンテナンスツールを配布していることがあります。

HDDベンダ提供 HDD関連ツール(ソフト)一覧

これらを使うことで、診断、物理フォーマット(Low Level Format)
静音化などを行うことができます。

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